2025.10.31
今回は、公園や並木道などでもよく見かける「カツラ(Cercidiphyllum japonicum)」を加工してみました。
春には若葉が淡紅色、秋には黄色く色づき、葉からはほんのり甘い香りがする、日本らしい広葉樹です。秋になるとカツラの木の近くに行くと、甘い香りがします。これは葉の中に含まれていた糖分や有機酸が分解されて、**「マルトール(maltol)」**という成分が生まれるためです。
- キャラメルや焼き菓子の香り
- 綿あめのような甘い匂い を連想させる成分で、実際に食品香料としても使われている。
だから、落ち葉が地面にたまるカツラ並木を歩くと、
まるでお菓子屋さんの前を通るみたいに甘い香りがします。
📷(カツラの木と葉の写真)



🍃 カツラの基本情報
- 科名:カツラ科(Cercidiphyllaceae)
- 属名:カツラ属(Cercidiphyllum)
- 学名:Cercidiphyllum japonicum Sieb. et Zucc.
- 分布:北海道〜九州、中国にも分布
- 樹形:落葉高木(高さ30m、胸高直径2mにも達する)
- 比重:0.50(やや軽めで均質)
- 材質:散孔材(きめ細かくなめらか)
🌲 材の特徴
カツラは広葉樹の中では比較的柔らかく、加工しやすい材です。
心材はやや赤みを帯びた褐色で、辺材は淡いクリーム色。大木になるため、大きな一枚板も取れます。
北海道や日高地方で産出される赤味の強い材は「ヒガツラ」と呼ばれ、特に良質とされています。
肌目は細かく、手触りはしっとり。イチョウに似た滑らかさがありますが、もう少し密度が高く、ロクロや彫刻にも向いています。
📷(木材写真・加工面のアップ)


🪵 加工してみた
今回使ったのは、製材されたカツラの板材。
削るとやわらかい木香が立ち、刃物の切れ味がそのまま木肌に出るような素直な感触でした。
木口が少し毛羽立ちやすいので、刃はよく研いで、軽く逃がすように削ると美しく仕上がります。
オイルを塗ると淡いクリーム色がより深みを帯び、時間とともに赤みを含んだ温かい色に変わります。
木地のままでも十分に美しく、上品な艶が出る木です。
📷(加工中の写真・オイルなし)

🤖 作品例
今回は、カツラの木で小さなロボット型のブロックを作ってみました。
柔らかく削りやすいので、角を丸めたり細かい面取りをしても割れにくく、手触りがとても気持ちいい。
木口の部分はほんのりピンクがかっていて、優しい印象です。
📷(作品写真)

🌿 おわりに
カツラは派手さはありませんが、彫刻や挽物に適した静かな美しさを持つ木です。
触るとどこか温もりを感じ、削るたびに木と会話しているような感覚になります。
古くから仏像や鎌倉彫などに使われてきた理由が、実際に削ってみるとよく分かります。
見た目はおだやかでも、削るほどに奥ゆかしい魅力がにじみ出る木。
そんな“カツラ”の素朴な味わいを、これからも作品の中で生かしていきたいと思います。

コメント