2025.10.29
今回は、鮮やかな黄色の果実で知られる「カリン(花梨)」を加工してみました。
庭木としても人気があり、秋には芳香のある実をつけます。
木材としては硬く緻密で、美しい光沢を持つ材木です。

🍃 カリンの基本情報
- 科名:バラ科(Rosaceae)
- 属名:カリン属(Pseudocydonia)
- 学名:Pseudocydonia sinensis
- 分布:中国原産(日本では本州・四国・九州で植栽)
- 樹形:落葉高木(高さ10〜15mほど)
- 葉:楕円形で縁に細かい鋸歯がある。春に新芽が芽吹き、秋に黄葉。
- 花期:4〜5月(淡紅色の花を咲かせる)
- 果実:10〜11月にかけて熟す黄色の楕円形の実。強い芳香が特徴。

🌲 材の特徴
カリン材は重硬で緻密、木理は通直またはやや交錯し、美しい光沢を持ちます。
削るときはしっかりとした抵抗感がありますが、仕上げ面は滑らかで艶が出やすいのが特徴。
- 比重:0.75〜0.85(非常に重硬)
- 肌目:緻密・滑らか
- 色調:淡紅褐色〜黄褐色(経年で赤みが増す)
- 用途:楽器材、家具材、彫刻材、寄木細工、工芸品など


🪵 加工してみた
今回使用したのは、公園で剪定・伐採されたカリンの幹。
樹皮は黄褐色〜赤褐色がまだらに剥がれ、美しい模様を見せていました。
乾燥させた材を製材してみると、明るい橙色の中にやさしい木目が浮かび上がり、磨くほどに深みが増していく印象です。
削ってみると非常に硬く、刃物の通りはやや重め。
しかし表面を丁寧に仕上げると、ガラスのような光沢が生まれました。

🤖 作品例
今回のカリン材からは、**四角い「くだらないロボ」**を制作しました。
耳のようなパーツには別の樹種(ウォールナット)を使用。
カリン特有の赤みと艶のある質感が、どこか生命感を感じさせます。

無塗装ではやわらかい印象、
オイル仕上げを施すと木目が引き締まり、温かみのある深い色調へと変化します。


🌿 おわりに
カリンは「果実の香り」や「喉に良い」といった印象が強い木ですが、
木材としての美しさ・重厚感も格別です。
加工してみると、刃の感触・光の反射・色の変化、どれも独特で、
“果樹材の魅力”を改めて感じさせてくれました。
「ただの街路樹」「果樹」として見過ごされがちな木にも、
こうして加工してみると新たな表情が見えてくる——
そんな瞬間に出会えるのが、この仕事の一番の楽しみです。

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