
~カチカチだけど、どこかあったかい。庭の果樹から生まれた“使えない斧”~
先日、とあるお宅の庭に長年植えられていた「かりん」の木をいただきました。
秋になると黄色い実をつけ、かりん酒やシロップに使われることで知られる、日本の伝統的な果樹です。
この木を乾燥させて、今回は「使えない斧」をつくってみました。
🌳「かりん」ってどんな木?
かりん(Pseudocydonia sinensis)は、バラ科カリン属の落葉高木。
硬くて緻密な木質を持ち、果実だけでなく、材としても非常に魅力的です。
庭木として長年育てられてきた今回の材は、年輪がしっかり詰まり、素晴らしい色味と質感を持っていました。
📝 ちなみに:「かりん」といっても、これは東南アジア産の「花梨材」ではありません!
インドネシアなどで出回っている「花梨(=ローズウッド系の熱帯広葉樹)」とは全く別の木です。
今回使用したのは、日本の庭で果実をつける“かりん”です🍐
🔨「使えない斧」のできるまで
今回のテーマは、「くだらない道具屋」名物の《使えない斧》。
もちろん、くだらないけれど本気で作っています。の位置や木目の流れを見ながら、慎重に削っていきました。
柄はほんのり反りがあり、自然な流線を活かしたデザイン。
刃のように見える部分も、ちゃんと刃の形をしているけど、もちろん切れません(笑)

🪵もとの材と製作過程
こちらが加工前のかりん材。乾燥させると赤みが増し、ツヤがぐっと引き立ちます。加工中、ほんのりと甘い香りがしてきたのが印象的でした。
「果樹の木を削っている」という不思議な実感。
木の中から、少しずつ道具の形が浮かび上がってくるような時間でした

🧡「くだらないけど、手は抜かない」
この斧は、薪を割ることも、枝を払うこともできません。
けれど、材選びから乾燥、形のバランス、節の配置まで、すべてにこだわっています。
くだらないものに、あえて真剣に取り組む。
それが「くだらない道具屋」のものづくりです。

📌素材メモ
- 樹種:かりん(榠樝/バラ科カリン属)
- 出どころ:庭木として育てられていた果樹
- 加工日:2024年6月
- 加工方法:手道具による削り出し、サンドペーパー仕上げ
- 用途:飾り用の「使えない斧」
🔚おわりに
木は切ったあとも、生きています。
どんな木でも、それぞれに物語があって、肌触りも香りも違う。
今回のかりんは、「果実をつけて終わり」ではなく、こうして形を変えて新しい命をもらったような気がしました。
くだらないけれど、ちょっとだけ心が動く。
そんな道具をこれからも作っていきたいと思います。
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